夏の雑感(長嶋有・岡田利規)

東京はうだるような暑さが続く。
今朝、NHK総合おはよう日本』では、夏を北軽井沢の別荘で涼しげに過ごす長嶋有が取り上げられていた。羨ましい。純文学系の本って数万部も売れたらすごい方だと思うし、年にせいぜい2、3冊のペースだろうし、それで作家の人ってなんでこんな優雅な生活ができるのかしら、と思いつつ、ちょうど先週『夕子ちゃんの近道』を読んだところだったので、小説が持っている空気と著者の醸す雰囲気の親和性を確認する。

「人間は皆同じような体をしているけれど、心に関しては、形や必要な栄養もそれぞれ全然違う別の生物」みたいなことを言う。確かにこの人は毎日あくせく働いている人々とは違う栄養で生きているという感じはする。幅を利かせる価値観の隣で、愚鈍と言われてもビクともしない。芸術家はこうであってほしい。

そういえば、と言いつつ話が変わるが、『新潮』2007年8月号に岡田利規が「初のヨーロッパツアーを終えて」を書いていた。浮かれることなく「日本でのアクチュアリティを失うようなことをしたり、失ったと見なされてしまったりするような、格好悪いことにならないように気をつけたい」。岸田賞を受賞した時も、なんか同じようなトーンの自戒の言葉を述べていたような気がする。大変立派な心がけだが、そんなことをいちいち表明するところが先生に褒められたい学生みたいで格好悪い。