小指値『Mrs Mr Japanese』

もう一月ほど前のことになってしまったが、小指値という劇団の公演を初めて観た。王子小劇場での『Mrs Mr Japanese』だ。自分にとって、いい意味で気になる劇団となった。

印象を一言で言うと、別に全てのシーンで笑わせようとしているわけではないんだが、なんかコントのオムニバスを観ているような舞台だった。会話や独白で進行するシーンでも身体がドラマからかなり距離を取っていているところや、シーンのつなぎが唐突なところなどがコントっぽさを醸す要因だろう。台詞と身体の関係については、チェルフィッチュに似てなくもないが、チェルフィッチュの「管理されただらしなさ」とは違って、本当にだら〜んと弛緩しているところが、小指値の特徴とも言えそうだ。ダンスシーンもあったりして、実にゆるゆるな感じで身体を動かす。そんな空気の中で、こーじ(山崎皓司)が舌でタバコの火を消すなどの電撃ネットワーク的な小技を見せたり、小柄なきぬちゃん(野上絹代)とかがポワントでなんとか相手を見下ろそうとしたりして、ますます観客をコントの持つ刹那を楽しむ感覚へと誘う。シーンの再現にも様式化にも興味がない。別に芝居じゃなくてもいいんだけれど、身体から滲み出る虚無感のようなものを表現したいんだ、とでもいう感じ。今後、こういうスタンスがどう強度を獲得していくのかが、楽しみだ。

ただし、ドラマ的要素がステレオタイプな点は課題だろう。高校を卒業してみたものの鬱屈した日々しか待っていなかった同級生たち・・・派遣の悲哀や主婦になって家に籠もる女性の孤独とか、そういう話の描き方が表面的で学芸会の台本みたいになっている。リアリズムはいらないけれど、観察力が欲しい。あと、最後に「未来から来たS」(篠田千明)がきぬちゃんのメンタリティを罵倒しまくって終わるというのも、面白くない。きぬちゃんを批判する必要もないし、怒りを爆発させるなら、その役目に外部的なポジションに立つ「未来から来たS」は相応しくない。自らが「これが今の若いJapaneseだぞ!」と力む主体となってしまうと、表象しようとしているその実態と矛盾してしまうのだ。