2004-01-01から1年間の記事一覧

警察国家・日本

今年2月に起こった「立川・反戦ビラ配布事件」が12月16日に地裁で無罪になった。官舎の新聞受けにビラを投函しただけで逮捕されるというとんでもない事件で、逮捕された3人は、アムネスティ・インターナショナルが認定する日本で初の「良心の囚人」となっ…

金森穣「black ice」への小言

稲倉HPの方に、先週末に新国立劇場で見たNoism04の公演「black ice」(金森穣)について感想を書きました。芸術監督としての務めは立派に果たしたと思う。偉い。でも、振付家としては一歩後退ではないかという気もするのだ。そこで今回は、金森に期待する者…

マリファントの振付(ギエム、コンテンポラリーを踊る)

12月2日、五反田ゆうぽうとで『シルヴィ・ギエム、コンテンポラリーを踊る』を見る。チケット入手のアクションがちょっと遅れたがために二階の後ろの方の席しか取れなかった。ジョージ・パイパー・ダンセズとギエムによるラッセル・マリファント作品集(デュ…

アメリカの倫理観(『ドッグヴィル』)

古い話題で恐縮だが、アメリカ大統領選でのブッシュ再選の要因として、有権者が「倫理観」を重視したからだ、という調査・分析結果が報道されている。大統領選の出口調査によると、有権者が投票で最重視した課題で、最も多かったのは「倫理観」の22%。次…

「dance today 11 ダンスをめぐる風景展」(USUSU/勅使川原三郎)

遅ればせながら、稲倉HPの方に先月横浜で開催された「dance today 11 ダンスをめぐる風景展」の感想を書いた。久々の稲倉HPの更新。ブログを始めた時に、もしかしたら、ブログばかり更新してHPの方が放置されてしまうのでは、と不安がよぎったのだが、その不…

CalLogとデジオ

最近話題のパーソナルな情報発信のためのWebツール2題。■「CalLog」は、空いた時間に携帯電話でちょっと書いては送り、Webにログを貯めていく新感覚の日記。 別にケチを付けるつもりは毛頭ないけど、デザインを見て、私は強い違和感を覚えた。こういうデザ…

写真と身体(「牛腸茂雄展−自己と他者−」)

三鷹市美術ギャラリーで「牛腸茂雄展−自己と他者−」を見てきた。彼が出版した3つの写真集の全ての作品や桑沢デザイン研究所時代の課題作品などを一挙に見ていくことが出来る素晴らしい展覧会だ。過去の展覧会で主要な作品は見ている人も、是非この機会に見…

インテリ男への教訓(『アニー・ホール』)

10数年ぶりにウディ・アレンの『アニー・ホール』 (1977) を見た。遊び心のある小技が次々と登場する:カメラに向かって話しかける。子ども時代や過去の回想シーンに現在のアニー(ダイアン・キートン)たちが現れて、過去の人物と会話する。出会ったばかり…

”三浦語”のための舞台(地点『じゃぐちをひねればみずはでる』)

三浦基の分節やイントネーション、テンポ、発音を操作してセリフに強いディストーションを掛けるやり方(一部で”三浦語”と呼ばれているらしい)に出会ったのは、03年11月にアトリエ春風舎で上演された 『三人姉妹』 (地点第5回公演)を見た時だった。それは…

自分の記録に夢中なる人々

9月22日付け朝日新聞の文化面に掲載された記事「僕の人生、まるごとパック」は大変興味深い。日々、自分が見たもの、聞いたものを全部記録する−−。デジタル技術の発達で、そんなことが可能になった現在、「思い出」を、いつでもだれにでも見られる形で保存…

ステファンとカミーユ(『愛を弾く女』)

[ 愛を弾く女 ] (1992) という映画を見た。エマニュエル・ベアールが出るクロード・ソーテ監督のフランス映画だ。2人の全く異質な男女が出会い、互いの美徳に魅せられながらも、違いすぎてうまくいかない。一言で言えば、この映画はそういう話だろう。主人…

『シンセミア』(3)−−悪意の「読書モデル」

『シンセミア』は最後まで正体を明かさない語り手によって、基本的に三人称で語られている。無論、三人称で書かれた小説の常套手法である、登場人物の意識が入り込む部分(独白的な部分。”一人称化”している部分)は随所にある。これまで2回の記事で議論し…

『シンセミア』(2)−−枠組みと読書体験

前の記事の続き。 『シンセミア』では、単語は辞書から取り出された履歴をもたない記号のように無表情であり、言い回しは語り手自身によって使い込まれたものというよりクリシェのリストから意識的に選ばれたかのようだ。だから、読者は語りから語り手の生き…

『シンセミア』の気持ち悪さ(1)

2週間前に書いた記事で、阿部和重の小説『シンセミア』について書いたけれど、あの小説の気持ち悪い読後感はいまだに続いている。あの記事では、鐘下辰男の芝居[ 現代能楽集II 求塚 ] との対比で、「日本の戦後史の縮図」という取り上げ方をしたのだが、お…

日常まったり機械(チェルフィッチュ)

8月23日、新宿パークタワーホールで「We Love Dance Festival 東西バトルAプロ」を見た。一番ウケたのは、まことクラヴ [ ニッポニアニッポン ] だったかもしれないが、初めて見たチェルフィッチュ [ クーラー ] が一番興味深かった。ばかばかしくて笑えて…

「東京の、バスでしか行けない住宅街」(桃唄309)

前の記事の続き。 1968年生まれ、山形県の果樹園農家と自衛隊駐屯地の町出身の阿部和重が、自分の故郷を舞台に日本の戦後の退廃を描き、1964年生まれ、北海道十勝平野の小さな町出身の鐘下辰男が、ニュータウンの閉塞状況を土地の伝説と結びつけて描いた(鐘…

動作・ジェスチャー・ダンス(石井満隆)

7月29日、前から一度見てみたいと思っていた石井満隆が麻布die pratzeでソロをやるというので見に行った。フリージャズらしきアルト・サックスとトランペットを吹くバッキーとダルブッカ(ダラブカ、中近東の陶器の太鼓)を演奏する有田帆太の生演奏が付く…