三浦基演出「三人姉妹」の衝撃('03年11月13日)

自分の通り道に演劇スペースのこけら落としが行われていたので、見に行ってみた。そしたら凄い拾いものをしてしまった! アトリエ春風舎で上演されている三浦基演出のチェーホフ「三人姉妹」(地点第5回公演)。ここのところのダンス観賞で蓄積された不満が一気に吹っ飛ぶようなインパクトを受けた。

台詞に登場人物の感情を語らせることを一切拒否し、行動も極端に象徴化させて日常行動の模写としての演技も一切拒否してしまう思い切った演出だ。そうしておいて、観客は、まるで濁った水面を通して魚の動きを見るように、チェーホフが用意したテキストのあれやこれやのリテラルな要素に煩わされることなく、役者のほとんど動かない身体や破綻した機械のような発声から微かに表出してくる情動のうごめきを観察できるようになる。そして、身を乗り出すようにして水面下を観察している観客の顔に、時折ピラニアが跳ね上がって襲いかかる−−役者の身体や発声から情動が激しく噴出し、観客はそれに暴力的に共振させられてしまうのだ。

ここにあるのは、個々の登場人物たちの身体ではなく、「三人姉妹」というテキストそのものの怪物のような身体だ。
(2003年11月13日記)